雨の季節から、夏へ渡すもの

七月に入りました。

長かった梅雨も、そろそろ終わりに近づいていますね。

あと少しすれば、雲が晴れて、こんどは照りつけるような夏の光が輝き出します。

雨の季節が過ぎていこうとしている今、この一ヶ月のあいだ、「こころ日和🌿」でお届けしてきたことを、少し振り返ってみたいと思います。

振り返ってみると、六月という月は、心にとって、なかなかに骨の折れる季節だったとあらためて感じます。

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心も、湿気を含んで重くなる

六月のはじめ、空気が湿り気を帯びはじめたころのことです。

雨が降っていなくても、なんとなく体が重い。

朝からどこかすっきりしない。

そんな日が増えていきました。

心もまた、季節の空気と同じように、湿気を含んで重くなる日があります。

それは、体も心も、いつもより少し多く、まわりのものを受け取る力を使っている状態なのだと思います。

そういう日に、無理に気持ちを明るくしようとすると、かえって心が疲れてしまうことがあります。

重たく感じる気持ちは、急いで消してしまわなくてもいいものです。

まずは、今はそう感じているのだと、心の中でそっと認めてあげる。

それだけで足りる日もあるのだろうと思います。

比べて落ち込む日の、過ごし方

季節が進むと、心の重さは、また別の形をとることもありました。

梅雨の空が、晴れたり曇ったり、急に雨を降らせたりと落ち着かないように、心にも、よく似た日があります。

ふと、誰かと自分を比べて、胸が重くなる。

あの人はうまくいっているのに、自分はどうしてこうなのだろうと、急な雨のような気持ちが降ってくる。

そういうとき、私たちはつい、二つのどちらかになりがちです。

比べてはいけないと気持ちに蓋をして、なかったことにするか。

あるいはその気持ちにのまれて、一日中、自分を責め続けるか。

けれど、もう一つの過ごし方があります。

降ってきた雨を、すぐにやませようとはしない。

かといって、ずぶ濡れになるまで打たれ続けもしない。

ただ、今、比べて落ち込んでいるのだなと、自分の心の天気を、少し離れたところから眺めてみる。

空をにらんでも、雨はやみません。

雨はやがて、自分のタイミングで上がっていきます。

だから私たちにできるのは、その空の下で、目の前の小さなことを、一つだけしてみることなのだと思います。

お茶を一杯いれる。

洗濯物をたたむ。

落ち込んだ気持ちは、抱えたままでかまいません。

その気持ちと一緒に、地に足をつけて、目の前のことをしていく。

不思議なもので、小さなことを一つ終えるころには、さっきまでの空が、少しだけ明るくなっていることがあります。

明けない夜の、過ごし方

そして、心の重さがいちばん深くなると、それは、出口の見えない夜のように感じられることもあります。

「明けない夜はない」という言葉があります。

けれど、いつか明けると言われても、その渦中にいるときは、その「いつか」が本当にやってくるのか、信じられなくなるものです。

夜が明けるまでを、どう過ごせばいいのか。

「それがわからない」という声を聞いたことがあります。

本当に、その通りだと思いました。

私にもかつて、出口の見えない、暗いトンネルの中にいるような日々がありました。

どうすれば抜け出せるのか、すぐに効くような答えを、必死で探していた時期です。

けれど、これさえすればという方法は、どこにもありませんでした。

それでも、目の前の一日と、そして自分自身の心と、向き合っていくうちに、少しずつ、何かが変わっていった。

いま思えば、あのころ、目には見えない小さな変化が、少しずつ起きていたのかもしれません。

夜を、一足とびに明けさせる方法は、ないのかもしれないと、今は思います。

それでも、その夜の中で、自分の心を少しずつ整えていくことはできます。

心が整い、しなやかさを取り戻していくと、不思議なことに、見えている景色のほうも、少しずつ変わっていきます。

だからもし今、明けない夜の中にいる方がいらしたら、無理に答えを出そうとしなくても、大丈夫です。

今日という一日を、なんとかやり過ごせただけでじゅうぶん。

それは、何もしていないようでいて、あなたが今日を、投げ出さずに生きたということ。

その一日の積み重ねが、いつか夜を明けさせていくのだと、私は思っています。

振り返ってみると

こうして六月の便りを振り返ってみると、季節や言葉こそ違っても、どの日も、実は同じことをお伝えしていたのだと気づきます。

重たい気持ちを、急いで消そうとしない。

晴れることを、焦って求めない。

ただ、その気持ちを抱えたまま、目の前のことを一つだけしていく。

それは、何もせずに諦めているのとは違います。

答えの出ない時間を、答えの出ないまま、一日また一日と過ごしていく。

その静かな時間こそが、いちばん深いところで、私たちの心を育てているのだと思うのです。

夏へ、渡していきたいもの

さて、雨の季節が終わり、これから夏がやってきます。

うだるような暑さは、梅雨の重さとは、まるで逆のように見えます。

けれど、じっとりとした湿気に消耗するのも、照りつける暑さに体力を削られるのも、心と体が疲れやすいという点では、よく似た季節。

だからこそ、この雨の季節に見つけた過ごし方を、そのまま、これからの暑い日々にも連れていけたらと思います。

疲れた日には、無理に元気を出そうとせず、今日はそういう日なのだと認めてあげる。

うまくいかない自分を、急いで変えようとしない。

そして、ほんの小さなことを、一つだけしてみる。

冷たい飲み物を一杯いれる。

窓を開けて、風を通す。

それだけで、心の中に、静かな風が抜けていくことがあります。

雨の季節が、そっと教えてくれたこの過ごし方を、夏へと渡していく。

今日のあなたの心にも、静かな風が通りますように。

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