「まだ足りない」と感じてしまう心のしくみ

― 頑張っても満たされないとき、置き去りになっているもの ―

頑張っているはずなのに、心のどこかで「まだ足りない」「もっと良くしないと」という声が聞こえてくる。

周りから見れば十分やっているのに、自分の中では、なぜか満足できない。

誰かに認められても、その場で一息つく前に、もう次のことを考えている。

終わった仕事より、できていないことのほうに、すぐ目が向く。

そんな感覚に心当たりのある方は、少なくありません。

今日は、この「まだ足りない」という気持ちのしくみを、ひとつずつ見ていきます。

「もっと良くしたい」という誠実な気持ち

この「まだ足りない」という感覚は、向上心の裏返しでもあります。

「もっと良くしたい」

「ちゃんとした自分でありたい」

そんな誠実な気持ちが強い人ほど、感じやすいものです。

その思いがあるから、人は前に進めます。

より良くありたい、もっと成長したいと思えることは、それ自体が大切な力です。

決して、努力が足りないから起きているのではありません。

等身大の自分が、置き去りになる

ただ、その思いが強くなりすぎると別のことが起こります。

いつのまにか、等身大の自分が置き去りになってしまうのです。

「まだ足りない」「もっとできるはず」と前ばかり見ていると、いま、ここにいる自分に目が向かなくなります。

今日できたことも、ここまで来たことも、視界に入らないまま通り過ぎていく。

しまい込んで見ないようにしてきたものに目を向けるという意味では、以下の記事でも近いお話を綴っています。

なぜ、頑張っても満たされないのか

ここに、ひとつの苦しいループが生まれます。

「まだ足りない」と感じてしまうのは、ほんとうは、達成が足りないからではありません。

心のどこかで、できる自分には「いい」、できない自分には「ダメ」と、知らないうちにジャッジしているからです。

ジャッジしているあいだは、「いい」に近づこうと頑張っても、その裏で「ダメ」な自分を否定し続けることになります。

だから、何かを成し遂げても、満たされた感じは長くは続かず、また「まだ足りない」と、次へ向かってしまう。

満たされる感覚は、できたことから感じられるわけではありません。

わいてくるどんな気持ち(できたうれしさにも、できないときの焦りや不安にも)、いい・悪いをつけずに、「いま、こう感じているんだな」と、受け入れていくことで少しずつ育っていきます。

立ち止まることが、こわい

本当は、頑張ることをやめるよりも、いまの自分と向き合うことのほうがこわいのかもしれません。

「ダメなように感じる自分」

「思うように進めていない自分」

それを見るのは、苦しいことです。

だから人は、立ち止まる代わりに、また頑張ろうとします。

動き続けているあいだは、その苦しさを見なくて済むからです。

そして「ダメだと思うような自分」を前にすると、つい自分を責めてしまいます。

その厳しさをどうゆるめていくかは、以下の記事にも書いています。

「そんな自分は受け入れられない」と感じるとき

では、ダメだと思うような自分を前にしたとき、どうすればいいのでしょう。

といっても、「どんな自分も受け入れましょう」と言われて、すぐにできるものではありません。

「こんな自分は認められない」と思うのが、自然です。

長く自分に厳しくしてきた人ほどそう感じます。

だから、一度に受け入れようとしなくて大丈夫です。

自己受容は、ダメな自分をまるごと好きになることから始まるのではありません。

まず、わいてきた気持ちに、いい・悪いをつけずに、「いま、こう感じているんだな」と置いてあげること。

その小さな積み重ねが、自己受容できる心を、少しずつ育てていきます。

たとえば、「まだ足りない」と焦る自分が出てきたら、その焦りを「ダメだ」と打ち消すのではなく、「いま、焦っているんだな」と、そのままにしておく。

無理に消そうとも、強く感じきろうともしない。

ただ、そこにあると気づいて、置いておくだけでいい。

その小さな「置いておく」が、自分の気持ちを、「いていい」と認めていく、自己受容のはじめの一歩になります。

おわりに

前に進もうとする気持ちも、もっと良くなりたいと思う気持ちも、どちらも大切なものです。

手放す必要はありません。

ただ、その途中で、いま、ここにいる自分を置き去りにしなくてもいい。

「まだ足りない」と感じるのは、あなたの頑張りが足りないからではありません。

わいてくる気持ちを、責めずに受けとめられる時間が、これまで少なかっただけなのかもしれません。

等身大の自分にも、少しずつ目を向けていく。

それだけで、「まだ足りない」と感じ続ける苦しさはゆるみ始めます。

自分の感情と向き合うとき、途中で苦しくなったり、受けとめきれずに心が疲れてしまうこともあります。

そんなときは、安心できる関係や場所の中でなら、ひとりのときよりも、気持ちを見つめ、置いておきやすくなります。

カウンセリングは、その「安心できる場」のひとつです。

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ひとりで抱えがちなときに、そっとのぞいてみてくださいね🌿